今朝はビデオ会議。うちの本社の場合サマータイムの期間中あちらの午後5時半がこちらの午前7時半、どちらに合わせるかは微妙な問題か。日米の労働習慣の違いで、早朝出勤して午後5時きっかりに退社するアメリカ人との仕事は、夜型が多い日本人スタッフにとってはつらい。本来ビデオ会議というのは社員が海外出張する時間と費用の節約になるはずなのに、結構国際電話回線の混み具合にも影響されるようで接続に30分もすったもんだすることもあり、結局はメールや電話に依存せざるをえない。そうはいいながら、顔を見ながら話をすると結構お互いに安心するというのはやっぱり人間自体がデジタルではなくアナログ、ってことか。外資企業の場合ほとんどの意見の食い違いは文化的な理解不足に加えて親会社の一方的な押し付けもあり、一筋縄ではいかないことばかり。結局アメリカのスタンダードがグローバル・スタンダードっていうのはどこの業界も同じ。そういう時はプレーヤーを代えつつ、時間をかけてあの手この手でボチボチ攻めるしかない。医者のいうことを聞かない患者に辛抱強く服薬指導や生活指導する、あの忍耐力と同じか。せめて患者が日本語をしゃべってくれればねえ。
ようやくビデオが終わり、会議の議事録作成を担当者に指示、そうする間に次の会議の時間がくる。今日は治験業務の一部を外注するにあたり業者との契約内容を煮詰めるという目的で、業者から3人来社。こちらもプロジェクトの担当者とともにプロセスの逐一を吟味。決められた日程通り仕事をしてもらうことのなんと難儀なこと。同じ日本人でありながら、こちらの意図するところをいつも正しく理解してくれるとは限らず、やはり口頭での約束プラス文書での確認作業がないと大事なところが手抜かりとなるリスクはいつも存在する。そうそう、やっぱり処方というのは口頭指示だけでなく自分で筆を取って書かなくちゃね。
また今日も弁当を買いに行く時間がなく、コンビニにかろうじて売れ残っていたお握りをデスクでメールチェックしながら食べる。それでも医者をやってた頃は外来が午後2時過ぎても終わらないのが結構あったから、これでもよしとせねば。
プロジェクトの担当者と一緒に某大学病院に出かける。玄関前でエリア担当のMRと待ち合わせ。開発業務で医者に顔を会わせるというのは営業にとってもポイントになるらしく、時には干渉が強すぎることもある。うまく線引きをしつつ、治験担当となる講師の医者とプロトコルについての意見交換を展開。どうも日本の医師には、製薬企業が申請のために企画する治験と医局で自分達が自由にやる研究との違いが認識できてないような気がする。臨床試験を実施する上で基本的な法律である、薬事法の存在を聞いたことさえないのでは?と感じたり、エンドポイント設定の重要性や信頼性のある測定方法についての理解が乏しいと感じたりすることも多々ある。そもそも医局で自主的にやっている臨床研究のいったい何割にきちんとしたインフォームド・コンセントがとられているのだろうか?と不安に思うことさえある。自分の医局時代を反省しつつ、今後の臨床研究のあり方に疑問を抱く今日このごろ。
やっとデスクに戻り、トレーに山積みされた伝票にサインしたり、回覧文書を次に回したりしているうちに、悩み顔のスタッフがプロトコルの原稿を抱えて相談にくる。デスクの上に乗ってる文書をずいっと横にどけてスペースを作り、治験の対象患者を選定する基準の詳細について説明しているうちに、開け放したドアのところに次の担当者が安全性評価についてのコメントを求めて並んでいるのが見える。すわ、厚生省への報告遅延か?と冷や汗!幸いどうもそうではないらしく、企業意見をどう表現するかということらしい。やれやれ、ほっと一安心。医者たるもの、太古の昔より最低限の心がけはDo
No Harmであります。安全が第一ですわ。
結局今日もろくに文献を読む暇さえ持てず、定例の企業医師会合へ参加すべく地下鉄に飛び乗る。カバンに詰めたNew
England Journalは既に1週間、毎日ただカバンに入りっぱなしで移動、いかんなあ。
滑り込みセーフで会場到着。受付で参加費を払って末席を占める。今月の講演は保険会社からリスク・マネージメントについてのお話。業界が違うとはいえ、リスクに対する考え方や組織的なリスク回避への対策のたて方など、とても参考になる。医者であれば結構自分一人の判断でどうになかる部分はあるが、企業では何百人単位の仕事になるため日頃からのコミュニケーションや教育が大きくものを言う。こういうところは医学部では教えてくれないから、入社して日々肌身で体験しながら会得するしかない。最初に入社した会社ではそういうことさえ考えもせず、やたらカイシャなるものに幻滅したが、考えてみれば医者は自由業、企業医師は組織の管理職。謙虚に学んで自己研鑚せねば、と思いつつ、でも医者だったら話は簡単でいいよなー、と若干過去を懐かしまないでもない。
同業の企業医師同士で軽く一杯やって帰宅。お互い会社での愚痴をこぼし、新しいガイドラインの話や厚生省でのやりとりの話題など、社外で苦労のわかる仲間がいるのはありがたい。自分の会社にいるだけではわからないことも多く、医者が企業で働くことの使命とは何ぞや?とあらためて考え直すこともしばしば。私なりの見解だが、医者はあくまで患者の利益のために働くもの、英語でいうFor
the best interest of patientsっていうやつだから、患者が希望する安全で有効な薬を開発することが我々開発を担当する者の任務だと思う。会社はもちろん営利企業であり、営業やってナンボの世界だから、医者たるもの自らの使命感がなければとてもやっていけない、と自分に気合を入れる。明日も朝8時から会社の会議、やれやれ金曜日まではほど遠い。それでも病院と違って会社には当直がないし、出張がはいらなければ土日とも休めるのはありがたい。何といっても健康だけは大切にせねば、と布団にもぐりこむ。
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